マオリ族には、「ハウ」という霊的贈り物の概念があります。
「仮にあなたがある品物(タオンガ)を所有していて、それを私にくれたとしましょう。
あなたはそれを代価なしにくれたとします。
私たちはそれを売買したのではありません。
そこで私がしばらく後にその品を第三者に譲ったとします。
そして、その人はそのお返し(ウトゥ)として、何らかの品(タオンガ)を私にくれます。
ところで、彼が私にくれたタオンガは、私が始めにあなたから貰い、
次いで彼に与えたタオンガの霊(ハウ)なのです。
(あなたのところからきた)タオンガによって私が(彼から)受け取ったタオンガを、
私はあなたにお返ししなければなりません。
(……)
それをしまっておくのは正しいとは言えません。
私はそれをあなたにお返ししなければならないのです。
それはあなたが私にくれたタオンガのハウだからです。
この二つ目のタオンガを持ち続けると、私には何か悪いことが起こり、
死ぬことになるでしょう。」
この文章は、モースの「贈与論」の中で述べられたものです。
誰かから何かをもらい、自分はそれを誰かにパスをする。
そして自分が渡した相手から返礼が来たとき、初めて自分がパスしたものが
贈り物であったことに気付く。
僕たちは、その連鎖で生きています。
それなら?
僕は、返礼を気づくことができない人間だったように思います。
与えられることが当然で。
返礼を受けることも当然で。
生きることはもちろん当然で。
いつからそうなってしまったんだろう。
あの日、かけてくれた言葉が返礼だったと気づいて、僕は情けなくなった。
このタオンガを、誰かに渡さなくちゃ。
みんなも、受け取ったタオンガは、大事に誰かに渡してください。
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