ショートショートです。
……
……
……
幸せってなんだろう、ってこの頃よく考えてる。
自慢じゃないけれど、私は男性にモテるほうじゃない。
もう少し異性を惹きつける魅力が私にあったらなあ、とか。
そうしたらもっと幸せだったんだろうか。
そんなことでくよくよ悩んだり。
毎日、退屈なわけじゃ決してないけれど、こんなに可愛い女の子が隣にいると、ね。
……
浮かんできたのは、やっぱり、という感情だった。
男ってわかりやすいんだから。
ばればれ。
その、男特有の積極さは、ちょっぴりうらやましくもあるんだけど。
さっき、私たちに声をかけてきたノッポさんは、もう私のことなんてそっちのけで、
隣の綾乃を文字通り質問攻めにしている。
のの。のんのん。
名前が可愛いから、それだけで話題の的となる要素を持っているのに、
彼女のずるいところは、見るものをすべて惹きつけるその容姿にあった。
目は当然のようにパッチリしていて、口元は、女の私でもキスしたくなるほどセクシー。
身長はあまり高くないんだけど(皮肉なことにそれがまた男性陣のツボを誘うのだが)、
ショートで切りそろえた前髪が、とても雰囲気に合っている。
ザ・モテ子って感じ。
そんなのんのんは、なぜか私のことを親友として選択してくれた。
選択っていうと、なんか妙な響きがあるけど、あれはたしかに選択だったと思う。
「私、サヤカのこと親友にするからね。」
理由はわからない。
嘘。本当は気づいてるけど、口に出したくないだけ。
彼女は、引き立て役として私をえらんだのだ。
高校生の頃の私は、その言葉を真に受けてしまうほど純粋だったのだけれど。
今は、ちょっぴり変わってしまった。
……
大学も同じとこに進学してしまった。
本音を言うと、違う大学に行きたかった。
そして行こうとしていた。
でも、私はW大に落ちてしまい、親からは浪人の許可がでなかったから(私自身、する気なかったし)、
結局、のんのんが第一志望で受かった大学、つまり私の滑り止めの大学に進学した。
中堅私大っていうのかな。
内部進学者も多いから、とにかく見るからに馬鹿そうな男が多くて、
入学式の日から私は内心うんざりしていた。
でも、のんのんは楽しそうだ。
というより、彼女はいかなる状況下においてもモテるから、楽しくないわけがない。
と、内心で毒づいてる自分が、実は嫌いだったりする。
……
今日は、いわゆるテニサーの新歓というイベントに、のんのんと二人で参加した。
まあ、ただの飲み会なんだけど。
馬鹿みたいな先輩が馬鹿みたいにお酒を飲んでて、何が楽しいんだろう、と思いながらその光景を眺めていた。
同じ席の先輩が教えてくれたのだけれど、新歓期は1年生にはあまり飲ませないという決まりがあるらしい。
だけどひとたびこのサークルに入ったら、君たちもそんな綺麗な状態じゃいられないよ。
ということらしい。
綺麗な状態じゃいられない、という言葉の真意を量りかね、私はあいまいにうなずいた。
そんな感じで、1次会は終わった。
「行きたい人は2次会のカラオケにいきましょー!」
と締まりのない声で幹事らしき先輩が叫び、酔っぱらった先輩たちがそれに続いて叫ぶ。
のんのんは?
あわてて周りを見渡して探したら、酔っぱらってるのかにこにこ笑ってる彼女を見つけた。
「サヤも、もち2次会いくでしょー?」
べたーっと腕にからまりついてきた。
そして、こういう目で見つめられると断れないのが私だった。
……
2次会のカラオケまでは、少し歩くらしい。
安いところを選んだらそうなったのだとか。
そんなわけでのんのんと二人で歩いていたところを、ノッポさんが声をかけてきたってわけ。
わかりやすい男っぷりを遺憾なく発揮している彼は、
私の白い目線はもはやまったく意に介さないらしい。
私は二人が楽しそうに話しながら歩く後ろから、手持無沙汰にそれを眺めてた。
なんでのんのんって、こんなにモテるのかなあ。
容姿が可愛いのは、認める。
さすがにそれは、認める。
でも、どう譲っても、性格は美人だとは思えない。
なんで男は、女を外見だけで判断するんだろう。
もっと、中を見てよ。彼女の中を。中心を。
なんで私って、こんなにモテないのかなあ。
顔だってそこそこは可愛いと思うし、性格も、いいし。
やっぱりのんのんが隣にいるから?
みんな、彼女に惹かれちゃうの?
私たちが親友でいる理由って、なに?
もはや親友ってなに???
そもそも、こんなことを考えている時点で、私って性格よくないのかも。
むしろ悪い。
こんなんじゃ、一生彼氏できないなあ。
……
「ねえねえ」
私じゃないよね、と思って振り返らなかったら、突然肩を叩かれた。
「ねえねえ!サヤカさんだよね?」
振り返ると、そこには先ほどの飲み会でテーブルが同じだったケンキがいた。
同じ新1年生。
通りがうす暗くて顔はよくわからないけど、低めの渋い声でわかる。
あまり飲んでいないのか、その声は自己紹介の時からなんも変わってない。
「そうだよ。サヤカでいいよ。
どうしたの?」
彼は少しそっぽを向いた。
暗がりの中、目を凝らしてみると、意外と鼻が高く、整った顔立ちをしている。
少し間が空いて、さっきと同じ渋い声で言った。
「俺さ、声低くて、カラオケ苦手なんだよね。
よかったら、この後、二人でどっかで飲みなおさない?」
うん。
そう頷いたら、彼の左手が、すぐに私の右手をつかんだ。
「じゃあ、いこ。」
彼の横顔を見上げる。
頬が赤いのは、おそらくお酒のせいだけじゃないのだろう。
そんなことを酔った頭で考えていた。
続編 「雨の下に、愛は宿る」
http://shumpeism.blogspot.jp/2012/05/blog-post_29.html
0 件のコメント:
コメントを投稿