2012年10月12日金曜日

木からリンゴが落ちるように、僕らは恋に落ちる


「an apple」

この世界は無重力に満ちているの。

愛の無重力。うんざりする。

寄り添う二人。たくさんの二人。

愛の無重力に満ちたこの世界で、ニュートンは何を発見したというの?

そんなことを考えていた私に。

あなたが、落ちてきた。

……

わけあって、詩を書いた。
テーマは「恋」。

少し解説を加える。

無重力は、文字通り無重力のことだ。
恋愛に浮かれてふわふわしているということ。
「私」はそういうふわふわした世界にうんざりしていたけど、そこにあなたが現れてしまった。
でも私とあなたとの出会いは無重力じゃなくて、むしろ重力に溢れた確かな恋だった。
そんな感じだ。

……

僕らはいつの間にか恋に落ちる。
友達として見ていたあいつが、いきなり「好きな人」になる。
その瞬間は様々で、その境界が曖昧な場合もあれば、「あ、いま恋に落ちた」と自覚しているケースもある。

人は生きていれば恋に落ちる。
人生の落とし穴のように、それは設置されているのだ。

あるいは、恋に落ちられる。
友達だったやつから「好きだ」と言われる。
その瞬間、彼の頭の中には彼女との出来事が駆け巡る。
「いつ、好きになったのだ?」
彼は分析する。
遡及的にそれを分析しようとし、無理だということに気付く。
すなわち、自覚することはできても、他人のそれを把握するのは難しい。

……

人は浮気を憎む。
倫理に悖るという。
しかし、誰にとっての倫理なのだろう?

彼はわからなかった。
彼は「恋人」を持ちながら、違う女性と恋に落ちた。
言わば二股だった。
やがて発覚した。
「みんな」は彼を非難した。
しかし、彼にどうすることができただろう?
落とし穴に落ちたのは、彼の責任ではない。
作った奴のせいだ、と彼は思った。

……

徐々に大人に近づく。
成人式を終えたあたりから、世界が現実的になる。
恋に落ちなくなる。

就職、結婚、出産…。

あらゆるリアルなイベントが、眼前に現れる。
本当にすぐ、そこに。

戦略的な恋愛をするようになる。
彼あるいは彼女と付き合った場合の、メリット・デメリットを比較する。
学歴・収入・身長。料理の上手さ・容姿・従順さ。
天秤にかける。
打算的になり、「この人と結ばれると幸福になれるのか」を考える。

……

誤謬に陥る。
「これが運命だったのだ」という誤謬。

あらゆる計算の果てに算出された人物を、運命の名の下に手に入れる。
幸せはもう目前だ。
そういう運命だったのだ。

……

いつからだっただろう。
木からリンゴが落ちるような恋をしなくなったのは。
彼はリンゴの皮を剥く妻を眺めながら、かつて愛した女性を思い出す。


0 件のコメント:

コメントを投稿