2012年9月4日火曜日

IT社会の進展が、経済を失速させる

私たちは、人類史上三度目の革命の真っただ中にいる。
情報革命だ。

産業構造を変革させる革命は、経済を発展させる。
例えば、かつて18世紀のイギリスで起きた農業革命は、それによって農村で職を失った労働者が都市に流れ、産業革命の重大な要因となった。
そうして引き起こされた産業革命は工業化を促進し、一次産業から二次産業への産業構造の転換が起きた。

20世紀後半。
インターネットは急速に発展した。
そして人類は、情報革命という歴史上の大きな転換期にいる。
二次産業から三次産業へ。
この事実に、どれだけの人が自覚的でいるのだろう。

……

ところで、インターネットが普及した現在の生活は、一見豊かになったかのように感じる。
例えばSNSの普及がそうだ。
以前より人と出会うことが格段に容易になり、過去の友達とも気軽に再開できるようになった。

音楽を無料で聞くことができ、店頭に向かわずともアマゾンで書籍を購入でき、あるいはネットを使ってどこでも仕事をすることができ、心に余裕が持てる。
情報革命がもたらした変革は、あまりにも大きい。

……

しかしながら、僕はこう思う。

IT社会の進展が、経済を失速させる

なぜか?

……

理由は簡単だ。

コンテンツにお金を支払うという概念が希薄になるからだ。

音楽業界からそれはやってきた。
ユーチューブだ。
言わずもがななので説明は割愛するが、CDが以前より売れなくなったことは誰が見ても明らかだろう。
今では、何千円もするライブのDVDも無料で見れてしまうし、また映画や連続ドラマを見れるサイトもある。

こういった状況は、人々に「コンテンツは無料なのだ」という錯覚を引き起こす。
たくさんの時間とお金を使って作った音楽やコンテンツなのに、お金が支払われない。
アーティストたちもたまったもんじゃないだろう。

あるいは、もうひとつ理由がある。

小売店の存在意義がなくなってしまう。

アマゾンなどのネット通販の台頭がそれだ。
人々は自宅で「ポチる」だけで商品を購入できる。

……

ふたつの理由のうち、インターネットの罪と言えるのは前者だろう。
僕はユーチューブが悪いと思っている。
そもそものシステムが悪い。

一般人が、ホームパーティのビデオをアップしたり、アマチュア音楽家が音楽をアップする分にはよいだろう。
しかし、それ以外の「もともと商品価値のあるコンテンツ」に対しては、ちゃんとその製作者に対価が支払われるようなシステムを構築するべきであった。
その点、日本のカラオケは素晴らしい。
作詞者、作曲者に歌われた分だけお金が支払われるから。

……

インターネットの台頭は、それでも、経済を発展させているかのように見える。
しかし、そうではない。
本当のところは、格差を進展させているのだ。

日本の就活を例に挙げよう。
1997年に、就職協定が廃止された。
就職協定とは、企業が「どこの大学の学生をどれだけの人数取ります」という学歴差別などが許されたもので、これにより就職活動も採用活動も自由になった。
みんなハッピーのはずだった。
そこに台頭してきたのが、「就職情報サイト」。
かつては希望だったはずのこのサイトにより、就職は混迷の様相を呈している。

それは、大企業に何万人もエントリーすることが可能になったからだ。
中堅大学の学生も夢を見て大手の人気企業にエントリーをする。
人気企業は困ったもんだ。
何万枚ものESをチェックするのにはコストも時間もかかる。
そうして生まれた、学歴フィルター。
学生からしたら、なんで落ちたのかがわからない。
企業も、不採用の理由を送ることができない。

誰が得をしたのか?

それは、就職情報サイトを作った、某企業だけだ。

ユーチューブやアマゾンだけが利益を得ているのと同じように。

……

僕らの知らないところで、格差が広がってきている。
情報社会の進展が、格差を広げているのだ。

もちろんインターネットにはいい点もたくさんある。
経済を進展させる面もたくさんあるのだ。
が、ありすぎて今さら僕が論じるまでもないので、書かない。

そうではなく、負の面に意識的になってほしいのだ。
僕が結局言いたかったのは、こういうことだ。

新しいサービスを作る際は、それによって社会に歪みができないような経営システムを構築してほしい。

自分たちだけの利益を考えないこと。

経済を失速させるということにあまり深い考察を加えられませんでしたが、また今度。

3 件のコメント:

  1. いつも楽しく拝読してます。

    ところで、YouTubeやAmazonを「格差を進展させている」として批判していますが、アーティストはメジャーレーベルに所属しなければ、作家は出版社に認められなければ、プロになれなかった時代のほうがよほど権益の集中が起こっていたのでは?
    また、学歴フィルターは、格差が減少し「中堅大学の学生も夢を見て大手の人気企業にエントリー」できるようになった結果であり、R社を格差拡大の主犯とするのは筋違いではないでしょうか。

    「経済を失速させる」という部分は、非効率なシステムが淘汰されているだけなのでどうでもいいです。

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    1. tsukuneさん

      はじめまして。
      コメントありがとうございます。
      ひとつずつお答えします。

      私の書き方が悪かったのですが、YouTubeやAmazonは「経済を失速させる」側の例です。
      CDが売れなくなる、小売店の存在意義がなくなるという意味で。
      たしかに、それ以前の方が権益の集中は起こっていたかもしれません。
      しかし「作家やアーティストの著作権が維持されている」という観点からは、それは悪いことではありません。

      もうひとつ、「R社を格差拡大の主犯とするのは筋違い」とありますが、僕はR社を主犯だと考えておりません。
      R社は、結果としての「受益者」です。
      誰かが主犯なのではなく、結果として、犠牲者と受益者が生まれてしまった。
      そして、このことに自覚的になるべきだ、というのがこの文章の主題です。

      これからもご意見・反論等ございましたら、お気軽にコメントしてください^^

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  2. 菊池さん

    久しぶりに見に来て返信に気付きました。
    上から目線かつ喧嘩腰なコメントにも関わらず、どうもありがとうございます。

    違法うpによって動画サイトが利益を得ているのは否定できませんが、コンテンツプロバイダは性質上著作権侵害を完全に防止することができず、原則免責されている(つまり動画を一つ一つ調べる義務が無い)ので、特別批判する理由にはならないかと。
    それよりも、PCやスマホでコンテンツを楽しむのが当たり前になった今、時代遅れの小売店や円盤・放送を駆逐して、新たな市場を開拓したのは大きな功績だと思います。

    すみません、別に主犯とは言ってないですね。俺の誤読です。
    確かに、就活は負のスパイラルに陥っていてどうにもならなくなっている面がある気がします。

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